和紙で名刺を作成したい方のために

和紙には手触りや風合いなど一般的な紙にはない魅力がありますよね。
そんな和紙を使って名刺を作りたい方のために、手順を整理してみました。

この記事を参考にして他とは違う和紙名刺を作ってみましょう。

和紙で名刺を作成する手順

まず和紙で名刺を作成する全体の流れをお伝えします。

デザインを制作する

紙を選ぶ

印刷する

完成

こんな流れになります。

早速ステップごとに解説をしていきます。

1.デザインを制作する

まずデザインがないと何も始まりません。
と、いうわけで名刺のデザインを作ります。

個人的には黒一色のデザインがオススメです。
せっかくの和紙ですから、書道の作品のように仕上げると雰囲気が出て良いものができると思います。
ただ、書家が作品に赤い落款印(らっかんいん)を押すようにワンポイントで色を入れるのは映えてそれはそれで良いものになりそう。

「そんな事言われてもどうやって作ればいいかわからない!」

というデザイナーではない方が名刺デザインを手にいれる方法が2つあります。

 

・自分で頑張ってみる

最近は『Canva』など無料でデザインを制作できるサービスが色々あります。
全くの初心者で0からのスタートでも、テンプレートがたくさん用意されていたりノウハウがネットで共有されていたりと作りやすい環境が出来上がっています。
「自分が欲しい名刺」のイメージを掴むという意味でも、一回自分手で作ってみるというのもいいかもしれません。

 

・プロにお願いする

自分で作る時間がない方やクオリティーを高くしたい方はプロにお願いするのも一つです。
お願いされる側の視点で言うと、クリエイティブ領域を分業してお任せしていただくのが仕事なので気軽に相談していただけると嬉しいです。

では誰にお願いしたらいいのか?

 

大きく分けると2つ。

1つ目は「デザイナー」
フリーランスかデザイン事務所かといった違いはありますが『デザイン専門で活動している方』にお願いするという方法です。
過去の制作事例や日々の活動を見て「この人なら自分の作りたい名刺にぴったりだ!」というデザイナーを見つけてお願いしてみましょう。

2つ目は「印刷会社」
和紙の名刺を取り扱っている印刷会社に印刷と合わせてデザインもお願いする方法です。
個人的な感覚で言うと、ネットで検索して出てくる印刷会社であればほとんどのところに名刺デザインの例があります。
もしテンプレートがあればデザイン制作の費用も抑えられますし、デザインを制作してもらうことになっても紙や印刷の都合を把握した上で制作が進むので名刺が出来上がるまでがスムーズだと思います。

……さて、デザインが仕上がったところで本題の「紙を選ぶ」ステップに移ります。

2.紙を選ぶ

和紙で名刺を制作する上で、一番楽しいかつ一番難しいのが「選ぶ」というステップ。

・何を基準に和紙を選んだらいいのか?
・そもそもどんな和紙があるのか?
・注意点はあるのか?
などなど……

不安な要素はたくさんあると思います。
少しでもその不安が取り除けるように情報をまとめていきます。

まずは「何を基準に和紙を選ぶか?」ですが、これをお伝えする前に「紙の印刷適正」について少しだけ。

コート紙など『印刷する目的で作られた紙』には表面に塗装をするなどしてインクが染み込まないように加工がされています。
逆に言うと加工がされていない紙はインクが染み込みます。

つまりにじむわけです。

もちろん印刷適正を高めた和紙もたくさんありますが
「印刷用の加工がされていない紙はにじむ可能性がある」
ということを頭の片隅に置いていただけると仕上がりをイメージしやすいかと思います。

 

それでは和紙を選ぶ基準の例を挙げてみます。

・色味
→紙の白さや色合いなど
・厚さ
→和紙自体の厚み
・個性
→手触りや繊維感、柄など
・印刷適正
→上記を参照ください
などなど……

これらのような要素を踏まえて紙を選んでいきます。

各要素の兼ね合いを考えながら、理想の和紙を探しましょう!
名刺は直接手渡すものですから、一度実物を見て触って選ぶことをおすすめします。

 

続いて「和紙を選ぶ際の注意点」に入ります。

名刺のデザインとの兼ね合いもあるのでしっかり理解していたけたらと思います。
(兼ね合いに無理が生じると「デザインの修正」か「紙の選び直し」という手間が発生する可能性があります)

 

注意点を3つ紹介します。

1つ目は「厚さによっては透ける」
和紙は長い繊維でできているため独特の強度としなやかさがあります。
そのため薄い和紙も存在するのですが、薄すぎる和紙を選んでしまうと裏面が透けてしまい表面の印刷と裏面の印刷が干渉してしまいます。
片面のみ印刷する場合は問題ないのですが、両面に印刷したい場合は透けない程度に厚い和紙を選びましょう。

 

2つ目は「ベタ塗りはかすれる恐れがある」
和紙は一般的な紙とは異なり表面が荒い(ツルツルしていない)ので、印刷が均一に乗りづらいです。
特に面を均一に塗る『ベタ塗り』は、紙の繊維の凸凹の影響を受けやすく、かすれが目立ちやすいのでベタ塗りを避けたデザインを制作するか多少のかすれを許容して比較的表面が整った紙を選ぶ必要があります。

また、同じ理由で細かいデザインや小さい文字は和紙には不向きです。
逆にこのかすれが名刺一枚一枚に異なる風合いを生み、それが和紙で名刺を作る目的になることもあり得ると思います。
和紙でも印刷できそうなデザインを制作しつつ、和紙の風合いをどこまで出していくかを決めておくといいでしょう。

 

3つ目は「一般的な紙よりコストが上がりがち」
和紙は一般的な紙とは異なる要素が多いことから、一般的な紙で名刺を制作するよりコストが上がってしまう傾向にあります。
たとえば手作業の工程が増えたり、印刷機の設定や清掃が別途必要だったりと様々な理由があるのですが、「特別な紙には特別な対応が必要」であることを覚えておきましょう。

これら注意点を踏まえた上で、紙を選んでいきましょう。

 

参考までに当社が取り揃えるラインナップの一部をご紹介します

・しこくてんれい

「しこくてんれい」は「大礼紙」という和紙をモデルに、より印刷に適した紙として開発された上品な用紙です。
羽のような特殊繊維は角度を変えると控えめに光ります。
風情豊かな和風の用紙をお探しの方にぴったりです。

・新・星物語

「新・星物語」は、銀色の箔を漉き込んだ特殊紙です。
きらきらと光る銀片は華やかで幻想的な雰囲気を生みます。
おもて面のみざらっとした、あたたかみのある質感です。
和風のお洒落な用紙をお探しの方にぴったりです。

・新・北斎

「新・北斎」はあたたかい風合いとやわらかな白さを持つ和紙風の用紙です。
版画・日本画の素晴らしさを引き立てるために作られた紙で、和風デザインとの親和性が抜群です。
登場は2009年と新しい用紙で、博物館や美術館の図録など格式高い場面での使用が想定されているそうです。

・新バフン紙N

「新バフン紙N」は藁などを漉き込んだ土壁風の用紙です。
「きぬ」は茶色がかった白で、落ち着いた発色で、「つち」は繊維の模様が見えやすくより素朴な印象を与えます。
荒削りでラフな雰囲気があり、手触りはザラっとしています。
やわらかい雰囲気のデザインにおすすめです。

・越前和紙(耳付き)

越前は、品質・種類・生産量ともに高い水準を誇っており、「和紙のまち」として有名な地です。

そんな和紙の本場・越前の職人による手仕事が光る越前和紙。
名刺に取り入れることで、日本の伝統技術や文化を伝えることができるのも魅力のひとつです。

そんな越前和紙の『耳付き』をご用意しました。
和紙の「耳」は、四辺に自然とできる薄い繊維の重なりのこと。
大きな判で漉いてから断裁するのではなく、名刺のサイズで手間暇をかけて1枚ずつ作られた高級紙の証ともいえます。

耳付き和紙は独特のやわらかい雰囲気が人気の特別感にあふれた用紙で、しっかりとした厚みがありなめらかな手触りが特徴的です。

 

越前和紙の『耳付き』名刺をご注文したい方はこちら

……さて、ちょうどいい和紙は見つかりましたか?

それでは「印刷」に入りましょう。

3.印刷での注意点

どんなにデザインができてどんなにピッタリな和紙が選べても、印刷時に失敗してしまうと『名刺』としての完成度は落ちてしまいます。

そこで「印刷」に立ち向かっていく上での注意点を整理していきます。

 

・『CMYK』と『RGB』

デザインデータを制作する上で注意が必要なのは「データが『RGB』になっていないか?」です。
色を表現する方法として光を混ぜる方法(加法混色)と顔料を混ぜる方法(減法混色)があります。

 

[加法混色]
・パソコンなどのディスプレイでの色の表現に使用
・色を混ぜるほど白に近づく
・RGB

[減法混色]
・印刷での色の表現に使用
・色を混ぜるほど黒に近づく
・CMYK

 

実はこれを間違えてしまうと「思っていた色と印刷された色が違う」ということが起こります。
印刷で使用するのはCMYKですので、デザインデータもCMYKで制作する必要があります。
間違えてRGBになっていないかチェックしましょう。

 

・印刷方法は合っているか

名刺印刷を印刷会社に依頼する場合、たいていは「オフセット印刷」か「オンデマンド印刷」を選ぶことになると思います。
この選択が自分の名刺に合っているか判断する必要があります。

「オフセット印刷」は大量印刷に向いた印刷方法ですが、少量印刷するには向かず納期も長めです。
逆に「オンデマンド印刷」は少量の印刷に向いていて納期も短めですが、オフセット印刷に比べて仕上がりに差が若干あります。

 

名刺でいうと1000枚以上作成したい場合はオフセット印刷がおすすめです。
……ですが「和紙でのオフセット印刷」はとても難易度が高いので、印刷会社とよく相談をした方がいいかと思います。

 

これはオフセット印刷・オンデマンド印刷に限らずですが、紙の選択肢の中に元々和紙がある印刷会社さんであれば経験があるはずなので安心です。

 

さぁ、ここまで来たらあとはこだわりの和紙名刺を使うのを楽しみに仕上がりを待つだけです。

4. 和紙で名刺を制作する手順のまとめ

今回は和紙で名刺を作成したい方向けに手順を紹介させていただきました。

 

ここで全体の流れを振り返ってみましょう。

 

1,デザインを制作する
・黒一色のデザインがオススメ(ワンポイントで色を入れてもいいかも)
・デザインは「自分で作る」か「プロにお願いする」

 

2,紙を選ぶ
・選ぶ基準は「色味」「厚さ」「個性」「印刷適正」など
・注意点を元にデザインとの兼ね合いを考える

 

3,印刷
・デザインデータがCMYKデータか確認する
・1000枚以上制作するならオフセット印刷がおすすめ
・紙の選択肢の中に元々和紙がある印刷会社さんであれば安心

 

 

和紙名刺の作成に向けて、まずは
・なぜ『和紙』を使って名刺を作りたいのか?
・どんな雰囲気の名刺を使いたいか?

などを考えるところから始めてみたらいいかもしれません。